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セットリストはどこだ!

「セットリスト(曲目リスト)がないと困るんだよ!」スコセッシが叫ぶ。「曲によってカメラアングルを決めてるんだから」

ローリング・ストーンズのライヴ映画『ローリング・ストーンズ シャイン・ア・アライト』(08)は、冒頭、なかなか演奏を映してくれない。監督のマーティン・スコセッシとストーンズとの折衝をややコミカルに追う。(スコセッシが役者として自分自身を、本当にコミカルに演じる。)ストーンズは何食わぬ顔でスコセッシの要請をはねのける。彼らにとってみれば、スコセッシの要求がきっとぴんと来ないんだろうな。無数のレパートリーの中から、今日はどれでいくかなんてのは、その日の気分と調子で決まるものなんだろう。

「セットリストが来た!」ほっとするスコセッシ。その次の瞬間、演奏が始まる! 一曲目は「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」! (もっとも、このセットリストをめぐるやり取りはやや脚色されているらしいが、これに近い事態は実際に展開されていたらしい。)

名作『タクシー・ドライバー』や『レイジング・ブル』、最近ではデカプリオと組んだ『ギャング・オブ・ニューヨーク』や『アビエイター』で知られるマーティン・スコセッシがストーンズのライヴ映像を撮る! それだけで興奮するじゃないか。しかも、会場となったのは、近頃のストーンズのツアーの恒例となったスタジアムではない。小さなホールだ。これがよかった。観客が手を伸ばせば触れられるところにストーンズがいる。実際、ミックやキース、ロンらのフロントマンたちは、時折観客にタッチする。
客席と同じ目線にカメラがある。ストーンズのステージではおなじみの前に張りだした部分を歩くミックをアップで追う。それだけで絵になる。素晴らしい。キースもロンも、かっこいいが、やはり絵になるのはミックだ。「スタート・ミー・アップ」のとき(だったかと思うが)、親指を一本立てただけのその立ち姿のとにかく様になること。

ストーンズの演奏を追ったドキュメンタリー映画は他にもある。1982年に『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥギャザー』は、ストーンズのスタジアム・ツアーを追った映画だが、ツアーの規模の大きさをひたすら強調する演出は、今回の対極と言えるだろう。ちなみにスコセッシの今回のテーマは「親密さ」。どうも、メンバー同士の親密さの意味らしいが、会場の親密さももちろん十分表現されていた。
ゴダールの『ワン・プラス・ワン』(68)は、「悪魔を憐れむ歌」のレコーディング風景だけを、政治的アジテーション映像と絡ませた、いかにもゴダールらしいコラージュ。このストーンズの録音の場面は、いくつも興味深い要素がある。親密さという点では、スコセッシの今回の映画に近いかもしれない。ステージ上ではクレイジーなミック・ジャガーがスタジオでは非常に知性的なのだ。意外。ギタリストのキースがベースを持って、ベースラインを作っていく。リズム・ラインが大事な楽曲なのは確かだが、本来のベーシストのビル・ワイマンが横でパーカッションを叩いているだけなのをみると、バンドの力関係が伺える。力関係といえば、結成時のリーダーのブライアン・ジョーンズが、隅の方で、意見を言うこともなくひたすらギターをならすだけなのも印象的だ。その直後ブライアンはストーンズを追いだされ、謎の死を遂げるのは有名な話。

さて、今回のライヴ映画だが、時折、昔のインタビュー映像がさしはさまれる。キースとロン、二人のギタリストに対して、「どっちが優秀なギタリストだと思う?」と聞くインタビュアー。ロンは「そりゃぼくだよ」と答える。キースはそれを聞いて「奴ならそう言うと思ったよ。でも、本当はおれたちは二人とも下手クソなのさ。でも、二人そろうと最高なんだよ」
下手クソだとは思わないけど、いいコメントだ。いや、四人がそろうと、とにかく最高なんだよ。

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